血圧コントロールの重要性 ―高血圧を知り、健康寿命をのばすために―
血圧とは、心臓が血液を全身に送り出すとき、血管の壁にかかる圧力のことを指します。この血圧には2つの数値があり、心臓が収縮して血液を押し出すときの圧力を「収縮期血圧(上の血圧)」、心臓が拡張して血液をためているときの圧力を「拡張期血圧(下の血圧)」と呼びます。
収縮期血圧が高すぎると動脈硬化の進行を促し、拡張期血圧が高いと心臓への負担が増して心不全や不整脈を引き起こす原因になります。高血圧は放置すると、やがて脳血管障害(脳出血や脳梗塞)、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、慢性腎不全など重大な合併症を引き起こすリスクが高く、命に関わる病気の引き金となります。
【図表1】高血圧が引き起こす主な病気
臓器 | 合併症例 |
脳 | 脳出血、脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA) |
心臓 | 心肥大、狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈 |
腎臓 | 慢性腎臓病(CKD)、腎不全 |
眼 | 網膜症、視力障害 |
高血圧の原因と改善可能な生活習慣
高血圧には遺伝的体質も関係しますが、近年増加しているのは、食生活の乱れ、運動不足、肥満、過剰なストレス、睡眠障害、過度の飲酒・喫煙といった生活習慣由来の高血圧(本態性高血圧)です。
そのため、薬物療法だけに頼るのではなく、日常生活の中での生活習慣改善が本質的な対策となります。
【具体的な改善例】日常で実践できる血圧管理
▶ 食事の工夫
- 減塩:1日の塩分摂取量を6g未満に(外食・加工食品は要注意)
- 野菜・果物の摂取:カリウムを多く含む食品(バナナ、ほうれん草、豆類)は血圧を下げる効果があります。※腎機能が低下している方やカリウムの摂取制限のある方は、注意が必要な場合があります、かかりつけ医師にご相談ください。
- 脂質の質に注目:動物性脂肪を控え、青魚や植物油(オリーブオイル)を活用
▶ 運動習慣の確立
- ウォーキング・サイクリングなどの有酸素運動を1日30分、週5日を目標に
- 運動が難しい人は、「ながら運動」(掃除、買い物、階段利用)でも効果あり
▶ 良質な睡眠とストレスケア
- 就寝時間を一定に保つ/寝る前のスマホやカフェインを控える
- ストレスは血圧上昇の大きな要因。深呼吸、瞑想、会話、軽い運動で緩和を
▶ 禁煙・節酒
- 喫煙は血管を傷つけ動脈硬化を促進
- 飲酒は1日1合未満を目安に(できれば休肝日を週2日以上)
血圧の目標値と「家庭血圧」のすすめ
高血圧は「自覚症状がない」ため、放置されやすい病気です。頭痛やめまいなどの症状は、よほど血圧が高くならない限り現れないため、定期的な測定が非常に重要です。
また、血圧は体調や時間帯、測定場所により大きく変動します。病院で測る「診察室血圧」だけでなく、自宅で毎日測る「家庭血圧」の活用が推奨されます。
【図表2】日本高血圧学会による血圧分類(家庭血圧基準)
分類名 | 収縮期(上) | 拡張期(下) |
正常血圧 | ~119 mmHg | ~79 mmHg |
正常高値血圧 | 120~129 | ~79 |
高値血圧 | 130~139 | 80~89 |
高血圧(Ⅰ度) | 140~159 | 90~99 |
高血圧(Ⅱ度) | 160~179 | 100~109 |
▶ 目標値の目安(筆者の提言):
収縮期血圧 130mmHg未満、拡張期血圧 85mmHg未満
家庭での血圧測定のポイント
- 毎日朝と晩の2回、トイレ後、安静にしてから測る
- 測定前30分はカフェイン・喫煙・運動を避ける
- 腕帯は心臓の高さで巻くこと
- 測定値は記録し、自分の傾向を把握しておく(アプリ活用も◎)
まとめ:血圧を知り、測り、整える
高血圧は進行性の病気でありながら、自覚症状が少ないため発見が遅れがちです。しかしその先には、心臓病・脳卒中・腎不全といった深刻な疾患が待っている可能性があります。
だからこそ、血圧は毎日の習慣でコントロールすべきもの。食事、運動、睡眠、ストレスケアなど日々の積み重ねが、将来の健康を大きく左右します。薬に頼る前に、まずできることから。自分自身の血圧を「知り・測り・整える」ことで、健やかな未来への第一歩を踏み出しましょう。
引用・参考文献
- 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2023」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
- 日本循環器学会「循環器病予防のための健康情報」
- WHO Hypertension Fact Sheet (2023)
当院では、下記のような医療サポートを実施しております:
- ・医師によるダイエット薬(GLP-1受容体作動薬など)の処方
- ・漢方専門医による減量指導および漢方処方
- ・管理栄養士による個別栄養指導
- ・鍼灸師によるバイオセラピー
- ・オンライン診療による定期モニタリング
お気軽にご相談ください。
らいふサイエンス内科クリニック 院長 濱屋貢造