正しい血圧の測り方 ― 家庭測定が命を守る ―

高血圧の予防と管理には、病院での診察だけでなく、家庭での血圧測定がとても重要です。なぜなら、病院では見えない「真の血圧の姿」を、自宅ではっきり把握できるからです。

診察室での血圧測定では緊張などの影響により高めに出ることがあります。このような状態を「白衣高血圧」と呼びます。逆に、診察時には正常でも、自宅では高めの数値が続く「仮面高血圧」というケースもあります。どちらも放置してしまうと心筋梗塞や脳卒中などの重大な循環器疾患に結びつくため、適切な管理と治療が必要です。

【図表1】血圧のタイプ分類(日本高血圧学会より)

タイプ 診察室血圧 家庭血圧 特徴
正常型 正常 正常 問題なし
白衣高血圧 高い 正常 緊張やストレスが原因
仮面高血圧 正常 高い 夜間・職場などで高くなる傾向
持続性高血圧 高い 高い 明らかな高血圧状態

このような背景から、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」でも、家庭血圧は診察室血圧と同等、もしくはそれ以上に重要な評価指標であるとされています。

正しい血圧計の選び方

現在、市販されている家庭用血圧計にはさまざまな種類がありますが、測定精度が高いのは「上腕式の自動血圧計」です。手首や指で測定するタイプは、位置や姿勢の影響を受けやすく誤差が大きくなるため、高血圧の診断や管理目的では推奨されません。

【図表2】血圧計の種類と特徴

種類 測定部位 精度 おすすめ度 備考
上腕式(自動) 上腕 高い 医療現場でも使用される標準
手首式 手首 中~低 姿勢により誤差が出やすい
指先式 低い × 正確な血圧測定には不向き

正しい測定方法とタイミング

家庭での血圧測定を有効にするためには、正しい方法で、一定の条件のもとで測定を継続することが大切です。

【測定前の準備】

  • 測定前30分はカフェイン・喫煙・運動・入浴・食事を避けましょう。
  • 室温は20~25℃程度の静かな部屋が理想です。
  • 測定姿勢:背筋を伸ばして椅子に座り、足は組まず床にしっかりつける。

【測定手順】

  1. リラックスして1~2分安静に。
  2. 腕の高さと心臓の高さをそろえて、カフ(腕帯)を巻く。
  3. 会話や動作は控え、静かに測定
  4. 間隔をあけて2回測定し、平均値を記録。
  5. 記録は手帳やスマホアプリで継続的に残すと便利です。

【おすすめの測定タイミング】

タイミング 目的
起床後すぐ(トイレ後) 一日の基準となる「朝の血圧」を把握
就寝前 一日の血圧変動や就寝中の血圧傾向を把握

 

血圧測定がもたらす「意識の変化」

毎日自宅で血圧を測定することで、自分の体調の変化に敏感になり、食事や運動に対する意識が自然と高まります。測定結果を見ながら、「塩分を控えよう」「今日は歩こう」「寝不足だと上がりやすいな」といった行動変容(セルフマネジメント)が生まれやすくなります。

また、定期的に測定を続けることで、治療効果の確認や薬の調整にも役立ちます。医師が診察時に患者さんの「普段の血圧」を把握することで、より的確な治療が行えるようになります。

測定だけで終わらせず、生活改善にもつなげて

家庭での血圧測定は、ただ数字を知るだけでなく、「行動のきっかけ」に変えることが重要です。以下のような生活習慣を意識して継続することで、血圧の安定や高血圧の予防に効果を発揮します。

【生活改善のポイント】

  • 減塩:味噌汁は薄めに、加工食品・外食は控えめに
  • 運動:毎日20~30分のウォーキングや軽い筋トレ
  • 睡眠:夜更かしを避け、6~7時間の規則正しい睡眠
  • 禁煙:1本でも血圧を急上昇させます
  • ストレス対策:趣味やリラックス法、会話の時間を大切に

まとめ:家庭血圧こそ、あなたの「本当の血圧」

医療機関で測る血圧はその場限りのものですが、家庭で毎日測定することでこそ、自分の本当の血圧=「日常の血圧」が見えてきます。そして、それを知ることが、心臓病・脳卒中・腎不全といった重大疾患を未然に防ぎ、健康寿命を延ばす確かな一歩となります。

血圧が気になる方も、まだ意識していない方も、今日から毎日の測定を習慣にしてみてはいかがでしょうか?

参考・引用文献

  • 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2023」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「家庭血圧」「高血圧」
  • 日本循環器学会「心血管病予防のための家庭血圧測定推奨」
  • WHO Hypertension factsheet (2023)

 

当院では、下記のような医療サポートを実施しております:

  • ・医師によるダイエット薬(GLP-1受容体作動薬など)の処方
  • ・漢方専門医による減量指導および漢方処方
  • ・管理栄養士による個別栄養指導
  • ・鍼灸師によるバイオセラピー
  • ・オンライン診療による定期モニタリング

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らいふサイエンス内科クリニック 院長 濱屋貢造