循環器疾患の症状とは? ― 正しい理解と早期対応が命を守る ―
循環器疾患は、日本人の死因の上位を占める重大な疾患群です。心筋梗塞や脳卒中など、突然発症し命に関わるケースもあるため、「早期発見・迅速な対応」が救命率を大きく左右します。
しかし、これらの疾患の症状は実に多様であり、患者自身がそれを「重大な症状」と気づけない場合もあります。今回は、循環器疾患に関連する主な症状やその特徴、そして見落としがちな注意点についてご紹介します。
心疾患の主な症状と注意点
心臓に関わる疾患の代表的な症状は、以下のようなものです。
【主な症状】
- 胸の痛み(胸痛)
圧迫感・締め付けられるような痛み(狭心症・心筋梗塞の疑い)
※痛みが軽くても心筋梗塞の場合があります(無痛性心筋梗塞) - 動悸
心拍が早くなる・ドキドキする・脈が飛ぶ感じ(不整脈の可能性) - 息切れ
階段を上るだけで苦しくなる(心不全や肺の疾患と関連) - 冷や汗・顔面蒼白・意識が遠のく感覚
急性心筋梗塞や重度の不整脈の可能性も
【図表1】胸痛の可能性がある主な疾患
疾患名 | 特徴 |
狭心症 | 運動時やストレス時の締め付け感・5~10分 |
心筋梗塞 | 安静時にも起こる持続的な強い胸痛 |
解離性大動脈瘤 | 背中まで響く裂けるような痛み |
肋間神経痛 | 呼吸や体勢で変わる刺すような痛み |
逆流性食道炎 | 胸やけや酸っぱいげっぷを伴う痛み |
胸痛=心臓とは限らないことも、鑑別を難しくしています。肋間神経痛や逆流性食道炎、気胸、帯状疱疹など、循環器以外の疾患でも胸に違和感や痛みを生じることがあるため、自己判断で「様子をみる」のは大変危険です。
脳血管疾患の症状と見逃し注意ポイント
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの脳血管疾患も、突然発症し命に関わる疾患です。以下のような症状に注意しましょう。
【主な症状】
- 片側の手足のしびれ・脱力・麻痺
- 呂律が回らない、言葉が出にくい、理解できない
- 片目が見えにくい、物が二重に見える
- 激しい頭痛(くも膜下出血の可能性)
- 意識障害・けいれん・嘔吐
これらの症状は一時的でも絶対に放置しないことが鉄則です。特に「脳卒中」の前兆として知られる一過性脳虚血発作(TIA)は、数分から数十分で症状が消えてしまうため、見逃されがちですが、発症後48時間以内に本格的な脳梗塞に至ることもあります。
重篤な症状が見られたら、ためらわずに救急要請を
下記のような重篤な兆候がある場合は、直ちに119番通報し救急車を呼ぶことが推奨されます。
- 冷や汗・脂汗
- 顔面蒼白
- 呼吸困難、息が吸えない
- 意識がぼんやりしている・返事がおかしい
- 胸や頭に、身の置き所がないほどの激しい痛み
救急要請は「適切な判断」が社会的にも重要
一方で、近年では安易な救急車要請が問題視されることもあります。
循環器疾患は、高齢者・糖尿病・喫煙歴・家族歴・高血圧・脂質異常症などのリスク因子がある人に多く見られます。
【図表2】循環器疾患の発症リスクが高い背景
リスク因子 | 内容 |
高血圧 | 動脈硬化を進め、心臓・脳に負荷 |
糖尿病 | 血管内皮障害・動脈硬化促進 |
脂質異常症 | コレステロールの蓄積 |
喫煙 | 血管収縮・血栓形成を助長 |
加齢 | 心血管系の柔軟性低下 |
男性・閉経後女性 | 性差によるホルモンの影響 |
家族歴 | 遺伝的要素が強く影響する |
自分や家族がこのような背景を持っている場合は、循環器症状の発症リスクが高いことをあらかじめ認識しておくことが大切です。
診断と治療は医療機関で
循環器疾患は、症状だけで診断することは難しく、医療機関では以下のような検査を組み合わせて正確に診断・治療が行われます。
- 身体診察・血圧測定
- 心電図(不整脈・虚血性変化の確認)
- 胸部レントゲン
- 血液検査(心筋逸脱酵素、炎症マーカーなど)
- CT・MRI・心エコー検査
中でも急性心筋梗塞・クモ膜下出血・大動脈解離といった即時処置が必要な疾患は、発症から治療開始までの時間が1分1秒を争うこともあります。
まとめ:症状を軽視せず、迷ったら相談を
循環器疾患は突然襲い、命を奪うことさえある病気です。痛みや息切れなどの体からのサインは、「たまたま」ではなく「注意信号」である可能性があります。
大丈夫と自己判断せず、早めの医療機関受診を。
重篤な兆候がある場合は、ためらわずに救急車を要請しましょう。
参考・引用文献
- 日本循環器学会「循環器病予防ガイドライン2022」
- 日本救急医学会「救急車の適正利用に関する指針」
- 厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報」
- 日本心臓財団「心疾患の症状と救急受診の判断」
当院では、下記のような医療サポートを実施しております:
- ・医師によるダイエット薬(GLP-1受容体作動薬など)の処方
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らいふサイエンス内科クリニック 院長 濱屋貢造